八十代の夫を妻が介護している患者宅での出来事。はいかいを止める薬で洗濯量が増える?
2011年7月19日 | 健康コラム
日常動作が鈍り失禁
数年前の冬期間の定時訪問で、昼にお邪魔した患者さん宅での出来事です。奥さんの目が赤くなっているのに気付き「どうしたの」と声をかけました。
「うちのじっちゃ、夜中に雪のなが走り回って、ついで歩いでだきゃ、寝れねぐなって、なも寝でね」(うちのおじいちゃん、夜中に雪の中を走り回って、ついて歩いていたら寝れなくなって、何も寝ていない)
つまり夫の夜中のはいかいを見守り寝不足で目が真っ赤になっていたのです。すぐ主治医に報告し、はいかいを抑える薬を処方してもらいました。塩酸チアプリド50mg一錠を一日三回のむように、という指示でした。一週間後に様子をうかがったら、はいかいは止まったけれども、今度は洗濯が多くなって大変だと言うのです。
よくよく聞いてみますと、トイレが間に合わなくなっていました。トイレまでは自分で行っているのですがズボンを下げる途中で便や尿が出てしまうのです。
これは明らかに、はいかいを止める塩酸チアプリドの量が多いため、本人の日常動作が鈍くなるのが原因と思い、再度、医師に相談しました。その結果、塩酸チアプリドを一日三回から二回か一回に減らすよう指示がありました。
奥さんにもう一度、薬の作用を十分話し納得していただき、一日二回、朝と夕方に服用するように変えました。この結果、はいかいは止まりトイレも間に合うようになって、さらに「洗濯量も通常の量に戻りました」。もちろん、奥さんの睡眠も確保されるようになりました。
のんでいる薬は、目的の効果が出ているようですが、たまたまこの患者さんには、投与量が多かったため動作が鈍くなり日常生活に支障が出てしまった例です。