ここから本文です

胃薬を選ぶときは・・・

「健康」『胃年齢が10才若返る新常識』(主婦の友社:2002年8月号より)に掲載されたものをそのままご紹介します。(編集協力:木村隆次) 月刊「健康」…毎月2日発売、定価570円、昭和51年創刊

胃薬は、自分の症状や体質を考えて選ぶことがたいせつ。 選び方をまちがえると逆効果になる。

一口に胃薬といってもその働きはさまざま

市販の胃薬の種類はじつにさまざまです。「胃もたれに」「胃痛に」「二日酔いに」など、効能書きも多岐にわたります。多くのかたは、利用する胃薬のブランドを決め、薬局で迷わず買い求めているのではないでしょうか。
しかし、あなたはふだん飲んでいる薬の効果効能を、ほんとうに理解していますか?市販薬は個人個人の症状に合わせてオーダーメイドで調合される病院の処方薬にくらべれば、その作用は弱いといわざるをえません。それでも、「いつもあまり効果がない」と感じるなら、薬の選び方そのものがまちがっているのかもしれません。かえって逆効果の薬を選んではいないでしょうか?
胃薬の成分は、いくつかの種類に分けられます。
●健胃薬/胃の働きを活発にし、唾液や胃液の分泌を促す
●消化薬/ジアスターゼやリパーゼなどの消化酵素が成分。食欲不振、もたれ、消化不良に効果がある
●制酸薬/出すぎた胃酸を中和させる。中和成分としては炭酸水素ナトリウム(重曹)や酸化マグネシウムなどが使われる
●胃粘膜保護薬/出すぎた胃酸などで胃粘膜が傷まないよう保護する
●鎮痙薬/胃の異常な緊張を抑えて痛みをとる
●H2ブロッカー/制酸薬が過剰に分泌された胃酸を中和させるのに対し、胃酸分泌そのものを抑える。医療の現場では以前から使用されていたが、数年前に市販薬として認可された胃薬界の新顔
一口に胃薬といっても、このようにその働きはさまざまです。市販の胃薬には、これらの成分が複数組み合わさって配合されているのです。

胃酸過多の人が漢方系の薬を飲むのは逆効果

そこで、自分はどんな薬を選んだらいいのか、という問題です。
まずは、自分の症状をよく観察しましょう。たとえば、食欲がなく、胃が重い場合は、胃の働きが鈍り、胃液の分泌が減っていることが考えられます。こういうかたが「話題の薬だから」とH2ブロッカーを選ぶと、胃酸の分泌がますます減り、かえって逆効果になってしまいます。
また、その人の体質などによって、避けたほうがいい薬もあります。
たとえば…
●健胃薬→多くはセンブリ・ウイキョウなどの生薬成分が配合されており、「漢方」などの名称がつきます。胸やけやげっぷなど、胃酸の出すぎによるトラブルがあるかたがこの種の薬を飲むと、ますます胃酸が分泌されてしまいます。 「漢方」はおだやかな作用をもたらすものではありますが、飲む人を選ぶ薬でもあるのです。
●制酸薬→胃酸を中和させる成分として配合されている炭酸水素ナトリウムは、ナトリウム塩です。常用するとけっこうな量の塩分をとるのと同じことになります。心臓や腎臓疾患、高血圧などで塩分を制限している人は注意が必要です。

服用をやめると症状がぶり返すときは受診を

もうひとつ、最近市販薬として承認された、H2ブロッカーについてもふれておきましょう。
この薬はもともと医療用として医師が処方していたもので、それだけにほかの市販薬にくらべてたいへん切れ味のいい薬です。ですから、3日間飲んでみても症状の改善が見られない場合は、服用をやめて医師か薬剤師に相談することがたいせつです。たとえ効果があったとしても、2週間を超えて連続服用することは避けましょう。
また、H2ブロッカーの成分のひとつである「シメチジン」は、お酒の席で飲むと肝臓のアルコール分解酵素に影響を及ぼし、ひどい悪酔いを引き起こしますから注意してください。H2ブロッカーには、シメチジンのほか、ファモチジン、塩酸ラニチジンがあります。服用しているH2ブロッカーが「シメチジン」かどうかは、薬の箱に明記してある成分名を見れば確認できます。
さて、あなたは自分に合った薬が見つかりそうですか?市販薬はあくまでも一時的な胃のトラブルをやわらげるもの。症状がひどいときや長引くときはもちろん、薬の服用をやめるとすぐにぶりかえす場合も、いったん服用を中止してお医者さんに診てもらいましょう。薬の効きめが強いために、逆に胃ガンなど重大な病気を見逃す危険性があるからです。