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自分がのんでいる薬を娘にプレゼント。娘は血圧が下がり過ぎ倒れてしまった話。

1人ひとり違う処方。

 普段から往診を受けている七十歳のおばあちゃん。血圧が高く、足がむくみやすい体質で薬を三種類もらっていました。そのうちの一つは先生からの直接の説明で「水分を出す薬」と毎回言われており、しっかりのんでとても調子がよい状態でした。
 ある時、立ち仕事をしていた娘の足がむくんでしまいました。その状態を見たおばあちゃんは、自分と同じ症状だと思って娘に自分がのんでいる「水分を出す薬」をプレゼントしてのませてしまったのです。
 娘は、血圧が下がりすぎ倒れてしまいました。その後おばあちゃんは、娘が倒れたのを見て「この薬、強い薬だっきゃ、のみだぐねじゃ。」(この薬、強い薬ですよね、のみたくないです。)と言って、のむのをやめてしまいました。
 この結果、むくみは取れない、血圧はガタガタ。おばあちゃん自身が素人判断でやったことで招いた事態の上、自分に対しても「強い薬」と思ってしまった結果、症状悪化に至ったことになります。何が問題かを考えてみましょう。
 原因になった薬は降圧利尿剤プロセミドです。おしっこを出してむくみを取ったり、血圧も下げる薬です。
娘に合う薬はまた別なんだね。  今回の問題点は、いわずもがな、自分でもらった薬を自分の症状と同じということで他人にプレゼントすることです。
 この薬は普段、血圧が正常な人には、必要のない薬です。急激な血圧の低下など「むくみを取る」目的以外の効果もあるのです。
 お医者さんは、患者さんを診断し「薬が必要」になれば、その患者さんの体質、年齢、体重、肝臓・腎臓(じんぞう)の機能などをすべて考慮し、薬の種類、量、のむ回数、使う回数を決めています。一人ひとりオーダーメードなのです。
 もらった薬でお医者さんや薬剤師から説明のあった効果以外の効果を持つ薬はたくさんあります。最近は、もらった薬のすべての効能が書かれた「情報提供書」を患者さんたちに説明補足で渡している薬局が多くなっています。
どうか、素人判断で「この薬っこ、効ぐはんで、なさ、けらね。」(この薬は効くからあなたにあげます)はやめてください。