心臓病用のはり薬(テープ剤)を健康な奥さんにプレゼント。同じ痛み止めでも…。
2011年7月19日 | 健康コラム
症状に応じ使い分け
高齢者の夫婦で往診を受けている家でのことです。薬剤師が訪問指導に訪ねると、奥さんが真っ赤な顔して具合悪そうにしていました。
【薬剤師】「どうしたの?」
【奥さん】
「父さんさ、もらったはり薬を張ったら、顔ほでって、あんべ悪ぐで…。」(父さんにもらったはり薬を張ったら、顔がほてって具合が悪くて…。)
事情を詳しく聞いたところ、奥さんにはもともと消炎鎮痛剤のはり薬が出ており、それを使い切ってしまったため、痛みが出てはだめだと心配しただんなさんが、親切にも「わのけらね。」(私のをあげます)と、自分の心臓病用はり薬をプレゼントしたのです。
だんなさんからもらった薬は、冠動脈拡張剤硝酸イソソルビドが入ったはり薬(テープ剤)です。それを奥さんは、使ってしまったのです。
奥さんに出ていたはり薬は、胃の痛みをとるための消炎鎮痛剤入りテープでした。
夫婦の仲がいいことでは問題ありません。うらやましい限りです。しかし、薬の使い方については問題が二つありました。
このテープが入っている包装が、どちらも銀紙で見た目は、同じに見えるのです。よく見ると片方は、心臓病用はり薬、もう一方は、消炎鎮痛剤と書かれています。
先入観でだんなさんは、銀色の袋に入ったものだからどっちも同じ「痛み止め」のテープ剤と理解しており、こんなことになってしまったのです。テープそのもので似ていると言えば似ています。
もう一つの問題は、他人に薬をあげるということです。患者さん一人ひとりのためにお医者さんは、薬の種類、量を決めているのです。夫婦とはいえ他人です。絶対にプレゼントしてはいけません。
こんなだんなさんの思いこみで奥さんは苦しい思いをしたのです。
われわれ薬剤師にも責任があります。「心臓が痛くなる」「肩が痛くなる」といった症状に対し、確かにどちらも「痛み止め」ですが、きちんと使い分けをしていることを教えていかなければならない事例でした。
最近は、いろんな症状に効果のあるはり薬(テープ剤)が出ています。見た目で判断してはいけません。どんな症状に使うのか、一日何回使用したらよいか、かぶれたときの対処法はーなどの確認を薬剤師にお願いします。